生涯元気印のお役立ち情報

人生100年時代に役立つ情報を日々発信するブログです

脱炭素に向けたEV(電気自動車)の必要性

世界はカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ、炭素中立)に向け動き出しました。

菅首相は2020年10月の所信表明演説にて、日本も50年カーボンニュートラル目標並びに30年目標として温暖化ガス排出量を13年度から46%削減すると方向性を示しました。

新型コロナウィルス禍からの経済復興の起爆剤として環境対策が明示されましたが、新たな30年目標は容易に達成できる目標ではありません。

今日、日本の二酸化炭素(CO2)排出量の2割弱を占める自動車業界にとって、脱炭素、環境問題への対応は最大の課題になっています。

今回はEV(電気自動車)を取り上げ検討します。

 

目次

自動車大量生産の歴史

自動車大量生産は、今からおよそ100年前1900年代初頭に生産された米国フォード・モーター社T型フォードに始まります。

T型フォードは、大量生産によって爆発的に売れました。1908年に発売され、以後1927年まで基本的なモデルチェンジのないまま、1,500万台生産されました。

4輪自動車でこれを凌いだのは、唯一2,100万台以上生産されたフォルクスワーゲン・タイプ1が存在するのみです。

その廉価さから、米国をはじめとする世界各国に広く普及しました。

 

電気自動車(EV)、100年に一度の技術革新

これまで1世紀の間、自動車はガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関が動力源でした。これにとって代わる内燃機関を持たず、電気を動力源としたモーターによって走行を行う自動車が開発され発売されました。

電気自動車が注目を集める最大の理由は、内燃機関を持たないことから排気ガスが発生しないという点にあります。

自動車の排気ガスには、温室効果を持つ二酸化炭素や光化学スモッグの原因となる物質を生成する炭化水素、そして人体に有害とされる窒素酸化物などが多く含まれます。

走行中、これらの物質を一切排出しない電気自動車は、地球環境はもちろん人体にも優しい革命的乗り物として注目を集めています。

自動車を動かす動力源となる電気は、ディーラー、家庭や商業施設などの充電スポットで充電が可能です。

その充電スポットは未だ十分には設置されていませんが、電気自動車の普及に伴って急速に数を増やしつつあります。

加えて、満充電状態で300~500Kmとガソリン車の燃料満タン状態とほぼ同じ水準の航続距離を持つモデルが登場してきています。

 

新興電気自動車メーカーの誕生

電気自動車メーカーとして米国テスラや中国バッテリーメーカーBYD、NIOやXPeng、など自動車生産をした経験のない会社が、EV市場に新規参入し、シェアを伸ばしています。

世界最大級のEV(電気自動車)メーカーである中国の「BYD」の新エネルギー車の販売台数が、2021年6月に前年同月比で約3倍に増加しました。

これは、世界最大の自動車市場である中国におけるEV需要の高まりを示す、最新のデータです。

深圳に本社を置くBYDは7月5日、6月の新車EVの販売台数が、4万1366台に達したと発表(昨年同月の販売台数は1万4165台)。BYDは、年初来の6ヶ月間で15万4579台のEVを販売しており、前年同期比で154%の増加となっています。

NIOは今月初め、6月の販売台数が前年同月比で2倍に増加し、8000台を超えたと発表。

テスラは7月26日、21年4~6月の世界販売台数が2.2倍の20万1304台と初めて20万台の大台を突破したと発表しました。

内、中国での販売台数は3.1倍の9万2000台と米国内の販売台数を大きく上回り、テスラにとって中国が最大のEV市場となりました。

同期間の最終利益は黒字で、EV販売にて稼げる体質に変わりつつあります。

日本の自動車メーカーの開発技術力

1970年代、石油危機によるエネルギー価格の高騰、米国マスキー法を中心とした自動車の排ガス規制を日本各社は乗り越えてきた経験があります。

(注)マスキー法とは、米国の環境保全、特に自動車の排出ガスによる大気汚染を規制しようとして制定された法律。70年型自動車の排出ガス排出量に対し、一酸化炭素と炭化水素とを75年までに90%減少させる、同じく窒素酸化物については76年までに90%減少させねばならない、これを達成できない自動車は販売禁止にする、というものでした。引用元:kotobannk

 

日本の自動車業界は規制に合格する低公害自動車を続々と開発し、世界進出の機会をつかみました。

日本車各社は、日本の基幹産業として、市場の変化に柔軟に対応し、技術力が問われるハイブリッド車(HV)など環境技術で世界をけん引してきました。EV車開発に対する日本車各社の対応が注目されます。

日本の新車は現状ガソリン車が6割、HVが3割、EVとプラグインハイブリッド車の比率は1割に満たない状況です。

日本自動車工業会によれば、自動車関連の仕事に就く人の数は日本の全就業人口の8%にあたる542万人と推計しています。

自動車は約3万点の部品で構成されますが、EVはガソリン車に比べ部品数が半分程度になるとされます。

新車販売に占めるEV比率が高まれば、EVに不要な部品の製造メーカーは業態転換や廃業の危機にさらされます。

日本の自動車産業の最大の強みは、完成車メーカーを頂点とするピラミッド構造です。EV化はそうした強固なサプライチェーン(供給網)を揺さぶることになります。

完成車メーカーを頂点とするピラミッド構造
出典元:日本経済新聞

2030年度地球温暖化対策計画

環境省と経済産業省は8月4日、2030年度に温暖化ガスの排出量を13年度比で46%削減する目標に向け、地球温暖化対策計画の修正案を公表しました。

13年度の排出量は14億800万トンで、6億4800万トンの削減が求められます。

排出量の16%を占める運輸については、貨物車やトラックが13年度に排出した7700万トンを、30年度には1180万トン削減するとしました。

46%削減目標の1%分にあたります。電気自動車(EV)など次世代自動車は2%分、2476万トンを減らします。新車販売における次世代自動車の割合を13年度の23%から30年度に50~70%に引き上げます。

運輸部門全体の排出量としては30年度に13年度比で38%削減します。経済産業省は8月4日、国の中長期のエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画の改定案を公表しました。

修正計画の特色は、大幅に再生可能エネルギー依存となっている点です。30年度の総発電量の内、再生可能エネルギーで36~38%、原子力で20~22%、火力41%とする電源構成としています。

19年度実績では、再生エネルギーの比率は18%にとどまり、30年目標は、今後8年の短期間で構成比を倍増させることを意味します。

原子力も19年度実績6%から27基をフル稼働し、20~22%への大幅増となっています。稼働には原発が立地する自治体の同意が必要で、ハードルは非常に高いと言えます。

石炭火力に関しても30年度も19%を石炭に頼る計画です。フランスは22年、英国は24年までに石炭火力を廃止する目標です。

国際社会からの廃止を求める圧力に抗って、想定通り石炭火力を使い続けることは出来ないと考えるべきでしょう。

このように目標を達成するには、いくつもの難題を抱えております。はたして目標達成は可能でしょうか?

実現性に疑問符が付く計画と言えます。菅首相が公約した数値に合わせるために掲げたものに過ぎないとしか思えません。

電源構成の課題

 

世界のトップメーカートヨタ自動車の経営戦略

トヨタ自動車は、8月4日に2021年4~6月連結決算を発表しました。純利益が8978億円と前年同期比5.7倍で、新型コロナ禍前の19年の同じ時期の実績を超えて過去最高でした。

世界の主要市場で販売を伸ばし、今年3か月間の米国での販売台数で首位に立ちました(販売シェア15.2%)。

トヨタ自動車は今年5月に静岡県で開催された24時間耐久レースに参戦しました。

豊田章男社長自らがハンドルを握ったカローラスポーツは水素エンジン車で、ガソリンの代わりに水素を燃焼させて走ります。

これは二酸化炭素排出量を実質ゼロにする脱炭素社会になっても、現行の内燃機関を改良して活用する可能性を検証する挑戦でした。

豊田社長によると、車がすべて電気自動車(EV)になれば、日本で100万人の雇用が失われるという。

 

トヨタは、EVに関しては充電設備の未整備や電池の高コスト、車のライフサイクル全体を通した環境性能という点で、EVはまだ実力不足であり、補助金や優遇措置など公的な支援に支えられているのが現状と見ています。

トヨタは、世界をリードしている充電可能なプラグイン・ハイブリッドこそが環境問題の現実的な解決策と考えています。

各国政府は2030~35年にかけて、エンジン車廃止を表明していますが、それらが確固たるエネルギー政策に裏打ちされた戦略ではないと分析しています。

削減で最も大事なことは、確固たるエネルギー政策を各国政府が立案し、その実現に向けて関連産業の開発を後押しすることにあります。

最優先で検討すべきは、CO2削減に向けた燃料/エネルギー戦略であり、自動車のEV電動化ではなく、脱化石化を考えたグリーンエネルギー政策を最優先で進めなければならないと主張します。

自動車メーカーは、予想される供給量に応じて、顧客のニーズへの対応とカーボンニュートラルを両立するために、エンジン車やハイブリッド車(HV)を含めた電動車の全方位開発が求められるとの主張です。

まさに今、エネルギー、燃料の大転換が求められており、各国メーカーはそれに沿った自動車の戦略を立案する必要があるのです。

トヨタ自動車の経営戦略は、地球環境と社会貢献、顧客に喜ばれるクルマづくりを基本にHVを「現実解」として全方位開発を推進してきました。

自動車のCO2を46%削減するということは、現在世界に存在する12億台の保有車のCO2 を46%削減しなければなりません。2020年の世界の新車販売台数7800万台に対する削減だけではこの目標達成は不可能なのです。

既に、ドイツAudi、トヨタ、ホンダ、日産自動車、マツダなどが表明しているように、ガソリンや軽油をカーボンニュートラル燃料であるバイオ燃料(バイオFuel)や合成液体燃料(e-Fuel)に転換する必要があるのです。

これらの燃料をガソリンや軽油に混合すれば保有車のCO2排出量は削減できます。既存のインフラも使える上に、エンジンの改良もほとんど不要です。

サプライチェーンや雇用、設備の大幅変更も必要ありません。

 

 各国の主要メーカーの中で、2030~2035年にかけてエンジン車廃止を表明しているのは米GMとホンダのみで、「ジャーマン3〔VW、BMW、Daimler(ダイムラー)〕」、トヨタ自動車などはHEVを含めて電動車を拡大すると表明するも、エンジン車廃止とまでは言及していません。

なぜなら、エンジン車やHEV、PHEVでのグリーン燃料(バイオ、e-Fuel)を想定した、CO2削減を考えているからです。

 出典元:脱炭素時代の自動車戦略2021 日欧米中の戦略とあるべき戦略

 

 各国、地域ごとの自動車メーカーの戦略と現状

現時点の主要メーカーの電動化率は、日本メーカーのHV比率が10~20%に達しているにすぎません。EV路線を表明するVWは5%にも達していません。

 

欧州連合は2021年からのCO2規制強化にともない、対応に苦慮するメーカーにさまざまな救済措置を行うことで、EVやPHEV販売が著しく拡大していますが、世界全体では中国をはじめとする補助金の減額による販売の頭打ちにより、販売比率は4%となっています。出典元:脱炭素時代の自動車戦略2021 日欧米中の戦略とあるべき戦略

世界最大の自動車生産国であり、NEV(新エネルギー車)規制でダブルスタンダードを課す中国政府は、開発にあえぐメーカー要請に応えるため、EV一辺倒からHV路線に舵を切りました。トヨタからのシステム供給にも既に2社が合意しています。

保有車にも効果のあるバイオ燃料やe-Fuel拡大に目を向け、46%削減の道筋が見えるエネルギー政策を、第一に検討する必要があります。

 

政府、産業界が早急になすべきこと

自動車産業のみならず、全ての産業は、これまで使用してきた化石燃料をグリーン電力、燃料に転換していく必要があります。

自動車の場合は、特に保有車12億台のCO2削減を図る必要があり、EVやFCVを増やしても2030年のCO246%削減は不可能であると思います。

これは電力行政でも同じことが言えます。日本はCO2削減に関わる特許数や水素関連技術に関わる特許数は世界一です。

政府は、確固たるエネルギー政策の下で、優れた技術を持つ関連企業の開発を後押しする責任があります。政府は残された時間は10年しかないという緊迫感を持って実現性のある計画を策定・提示してほしいと思います。

各国は脱炭素に向けて国家ぐるみで規制強化や財政支援の検討を行っています。

英国では、独立した政府諮問機関である気候変動委員会が司令塔となって、脱炭素の目標策定などを推進しています。

翻って、我が国は司令塔が不在で、政府内で経済産業省と環境省の調整に常に手間取る状況が続いています。日本も英国のように国全体の視点で政策を検討する組織が必要で、早急に作るべきです。

またコロナ禍で、ウイルスが温暖化に無縁でないということが認知されました。自動車メーカーとエネルギー関係業界はこれまで以上に、地球温暖化ガスであるCO2削減を真剣に取り組む姿勢が問われます。

温暖化を阻止できなければ、自然災害の多発と、新たなウイルスのまん延により経済成長どころではなくなり、企業の存続にも大きく影響を及ぼすことになります。

温暖化対策を政府、産業界、国民が一体となって進めなければ、これらの脅威は増幅するばかりで、国の存続が危うくなると認識すべきでしょう。