出典元:NHK
新型コロナウィルス感染予防の切り札として新型コロナワクチンの接種が急ピッチで進んでいます。
社会の構成員の4割あるいは6割以上の人が免疫を持つ「集団免疫」ができると、感染症は次第に消えていくとされています。安全に集団免疫を実現するにはワクチン接種が不可欠です。
ワクチンは健康を損ねないで私たちの体にウィルスに対抗できる免疫をつくる薬です。
新型コロナワクチンで初めて実用化され、注目を集めているメッセンジャーRNA(mRNA) について、調べてみましたので、ご報告いたします。
mRNAとは
細胞内でDNAの遺伝情報をもとにたんぱく質を作る際に伝令役となる物質です。
伝える遺伝情報に合わせて人工合成できます。
新型コロナワクチンではウィルスのたんぱく質をつくるmRNAを体内に投与します。ウィルスのたんぱく質ができ、それを免疫が記憶することで、ウィルスが実際に侵入したときに感染抑制などに役立ちます。
新型コロナワクチンの接種
私は自衛隊東京大規模接種センターにて、6月3日及び7月8日の2回モデルナ製ワクチン接種を受けました。
接種時に入手した資料(武田/モデルナ社製ワクチンの特徴)は次の通りです。
新型コロナワクチンの開発
新型コロナでは、米国ファイザー社と独ビオンテック社、米国モデルナ社がmRNAを投与するワクチンを早期に実用化しました。
ファイザーやモデルナはそれぞれ2020年1~3月ごろから本格的に開発を始め、同年12月にそれぞれ英米で緊急承認を受け、一般の人への接種が認められました。
従来ワクチン開発には少なくとも1年半はかかるというのが常識でしたから、異例の速さです。
従って、ワクチンの治験データが数量的に少ないとの指摘もあります。
カタリン・カリコ博士の貢献
上記ワクチンはいずれもカタリン・カリコ博士らが2005年に発表した研究成果が土台となっています。
カリコ博士はハンガリー生まれの女性研究者で、1985年米国に移住し、ペンシルベニア大学などで資金難に苦しみながらmRNAを治療に役立てる研究に取り組んできました。現在はビオンテック社の上級副社長です。
出典元:NHK www3.nhk.or.jp
変異型に対するワクチンの効果
新型コロナウィルスの感染状況において、流行の主体が感染力の強い変異型に置き換わってきています。
変異型への効果について、カリコ博士は「mRNAワクチンは抗体がウィルスを捕獲し、ウィルス表面のスパイクたんぱく質と結合する。細胞内へのウィルスの侵入を防げる機能(液性免疫)と、T細胞(Tリンパ球)が感染した細胞の表面にあるウィルス由来のスパイクたんぱく質の小片を探し出し、細胞を破壊する機能(細胞性免疫)がある。変異型は抗体による捕獲を逃れても、T細胞からは逃れられない」と語っています。
情報元:日本経済新聞2021年6月5日付け「大機小機」
mRNAの医薬としての期待
がんやエイズウィルス(HIV)などを対象にした新薬開発を目指し、米国製薬会社モデルナなどが臨床試験(治験)を進めています。
人工合成できるので、病気に合わせた創薬が容易なことから、医療にイノベーションを起こす可能性があり、大いに注目されています。
情報元: 日本経済新聞社2021年6月15日付記事
新型コロナウィルス感染症への備え
新型コロナウィルス感染症の終息が見通せるようになるまで、変異型の発生を抑制するためにも、すでにワクチンを接種した人を含む全員が、これまで通りの感染予防策を徹底し、感染者数を低く抑え込むことが必要です。
日本は新型コロナウィルスの感染拡大への備えや迅速な行動ができなかったと大いに反省する必要があります。
今回の危機を教訓に、将来起こりうる新たなウィルスに備えるためにも、今回取った施策を分析評価し、今後の対策を備えておきたいと考えます。
米国ジョンズ・ホプキンス大学は、2018年に新型コロナウィルスの出現を予見し、その疫学的調査や事前の対策の必要性を報告書としてまとめて注意を喚起していました。
しかしながら、その勧告は生かされませんでした。
今回の危機で日本社会のIT(情報技術)化の遅れも痛切に感じました。かつて1980年代日本はジャパン アズ ナンバーワン(Japan as number one) と世界から評価されました。昨今は先進国と呼べないような状況にあります。私どもは何とかしてこの国を良くしていくように英知を出していきたいと考えます。