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衆院選公約と既コロナ対策費

衆議院選挙

衆議院選挙

衆院選が10月19日公示され、選挙戦が始まりました。

今後もコロナ禍の状況が長く続くと想定されますので、各党のコロナ対策公約をどう判断したらよいか、問題点はどこにあるのか考えてみました。

 

目次

 

分配政策の選挙公約

「分配政策で分厚い中間層を再構築」(自民党)

「子育て世帯へ未来応援給付」(公明党)

「年収1000万円程度までの所得税ゼロと給付金」(立憲民主党)

各党の選挙公約は現金を国民に配る給付金など「分配政策」が前面に掲げられています。

元よりコロナ禍で困窮する個人や企業への安全網を整える支出は必要です。問題はそのような多額の財源をどう手当てするかということです。

選挙民の歓心を買おうと「ばらまき政策」を出していますが、そんなことで私ども国民は騙されてはいけないのです。

矢野康治財務次官「文芸春秋11月号」寄稿記事

矢野康治財務次官が「文芸春秋11月号」に寄稿した「このままでは国家財政は破綻する」が大きく話題になっています。その大意は「与野党ともに財政バラマキに興じているが、日本人の多くはそれを歓迎するほど愚かではない。放置すればいずれ財政破綻する」というものです。

矢野氏の問題提起は誠に正論であると思います。

日本は、少子高齢化、人口減少のもとで社会保障の持続性をどう維持するのか、30年余も1%弱の低成長にとどまる日本の成長力を強化するために生産性向上にどう取り組むのかといった大きな課題を抱えています。

しかし、こうした取り組まねばならぬ改革の議論があまり行なわれないことは誠に残念です。

2020年度に3度の補正予算を組んで積み上げたコロナ対策費は、いまだに費用対効果の検証さえされていない状況です。

既コロナ対策費の支給状況の実例

知人のプロの音楽家(弦楽器奏者)は次のように実態を話してくれました:

日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金を昨年9月8日に申請書を提出。
交付決定日が21年4月16日(審査に7か月8日間要した)。

それから補助事業計画を開始して実施期限7月31日までに完了。

8月9日に実績報告書を提出。事業計画は自腹で実施しています。

10月5日、9月30日付文書が送られて来て、それには不足・不備書類の提出のお願いが書いてありました。

要求内容は、購入した演奏会用衣裳代の請求書の提出、楽器の修理代の請求書の提出など。提出済み領収書に加えて通常もらうことのない請求書を要求しています。

上記の通り、自分で立て替えて実施している補助事業に対する補助金は、1年以上経ってもいまだ支給されていない状況です。

お役所の業務処理の遅いこと、人員不足、困っている人に支給しようとする思いやりのなさ、早急に支給しようとする時間観念の欠如、規則だからとルールに従い請求書の提出を求める柔軟な判断力が出来ない硬直的な考え等、効率的な事務処理がなされていないことに知人は非常に憤慨しています。

長くなりましたが、知人が経験している由々しき実態を皆様に知っていただきたく思います。このような実態では、日本は各国に劣後し取り残されてしまいます。

 

30兆円超となった21年度予算への巨額の繰越金と追加経済対策

NRI金融ITイノベーション事業本部 エグゼクティブ・エコノミスト木内 登英氏が、2020年度の国の予算におけるコロナ対策について、適切な分析を行っていますので紹介いたします。

■繰越額は異例の30兆円超

2020年度(令和2年度)の国の予算は、まさに異例づくめとなった。第1に、新型コロナウイルス問題への対応から、3回にわたって補正予算が編成され、それによる一般歳出の増加額は合計で76.8兆円にも及んだ。これは当初予算の一般歳出規模を74.8%も増加させた。

第2に、新型コロナウイルス問題によって経済は悪化したが、税収は60.8兆円と予想外にも過去最高を記録した。2019年10月の消費税率引き上げによる消費税収増加の影響に加えて、法人税収も11.2兆円と想定より3.2兆円多くなった。旅行関連、飲食関連など対人接触型サービス消費は大幅に悪化したが、巣ごもり消費の増加や輸出の急回復の影響で、大企業製造業の業績が好調であったことが背景にある。

そして第3は、2020年度内に使いきれずに、2021年度に繰り越された繰越金が30.8兆円に達した。これは一般歳出規模全体の2割弱、3回の補正による一般歳出の追加増加額合計の約4割に達した。これまで繰越額が最も多かったのは、東日本大震災直後の2012年度の7.6兆円だった。

■「規模ありき」の3回の補正予算が巨額の繰越金に

これほど巨額の繰越金が発生したのは、主に、3回の補正予算で計上した新型コロナウイルス対策の部分だ。そもそも3回目の補正予算が成立したのは今年1月末のことであり、年度内に使いきることはそもそも難しかったという面がある。しかしそれだけでなく、2回の補正予算に計上された新型コロナウイルス対策費でも、使い残しが目立っている。

繰越金の内訳をみると、コロナ禍で打撃を受けた企業向けの実質無利子・無担保融資制度の6.4兆円が最大だった。また、休業要請に応じた飲食店などへの協力金に充てる地方向けの臨時交付金も3.3兆円が残った。昨年末に停止したままの観光支援策「GoToトラベル」は2.7兆円の予算の半分程度にあたる1.3兆円が繰り越された。また、公共事業費も人手不足などで執行が進まず、4.6兆円の使い残しが生じた。

巨額の繰越金の発生には、必ずしも必要ではない予算を十分に精査せずに補正予算に計上してしまったという問題と、必要な予算を計上したが、その執行が遅れてしまった、という2点が主に考えられる。

第1については、補正予算で「規模ありき」の決定となってしまったことが、理由の一つだろう。それでも繰越金は、必要な予算ということで今年度に繰り越されている訳だが、2021年度中にすべて執行される保証はない。また、予算計上されたが、決算で予算執行を断念し不用となったものが、3.9兆円にも及んでいるのである。

■非常時には不正利用防止よりも迅速な支援を

第2については、新型コロナウイルス問題で打撃を受けた企業や個人への支援が、迅速に執行されていないことが大きな問題だ。最近は協力金の支給が遅れることが注目されているが、それ以前から持続化給付金や雇用調整助成金の申請の煩雑さや審査に時間がかかることで、支給が遅れることが大きな問題となっていた。

これは、手続きを行う職員の人手不足の問題に加えて、不正防止に力点が置かれたことで審査にかなりの時間を要してしまったことが原因だろう。平時はそれでも良いが、現在のように非常時には支給のスピードを上げることが重要だ。不正利用については後に取り締まるとともに、その罰則をより厳しくすることで不正利用の抑止を狙うことが妥当なのではないか。

■追加経済対策では巨額の繰越金発生の教訓を生かせ

政府・与党は年内の衆院選を視野に入れて、秋にも補正予算編成を行い、巨額の経済対策を打ち出す可能性が高まっている。30兆円規模とも言われる。過去最高となった2020年度の剰余金4.5兆円が財源の一部に利用されるだろう。

しかしその際には、異例の規模となった2020年度予算の繰越金の経験を十分に踏まえることが求められる。決して、再び「規模ありき」の経済対策となることがないようにしなければならない。そもそも、既存のコロナ対策費は繰越金として30兆円あるわけだから、現在の政策の延長線上であれば新たな予算化は必要ない。補正予算を編成するのであれば、あくまでも、必要性、緊急性がかなり高い新規の施策を予算化すべきだ。

一方で、経済対策の成立よりも、必要な支援をいかに迅速に企業や個人に届けるか、という執行に一段と注力する必要があるだろう。緊急事態宣言に関わる協力金については、政府は前渡しも検討するとしているが、それをぜひ迅速に実行して欲しい。

現時点での優先課題は、新型コロナウイルス問題で打撃を受け支援を必要とする企業や個人にピンポイントで、しかもいかに迅速に財政資金を届けるか、である。この点に照らすと、一律給付金の支給のように、新型コロナウイルス問題で経済的な打撃を受けていない個人も含めて広く支給をするような対策は望ましくない。またそれは、いたずらに財政環境を悪化させる面もあることから、控えねばならないだろう。

(参考資料)
「予算繰り越し、過去最大の30兆円超」、2021年7月30日、朝日新聞
「政府予算の繰越額、過去最高の30.7兆円 20年度決算」、2021年7月30日、日本経済新聞電子版
「税収、最高の60.8兆円 剰余金4.5兆円も最多 20年度決算」、2021年7月5日、日本経済新聞電子版

引用元:コラム|木内登英のGlobal Economy & Policy Insight

衆院選の結果、政権を獲得すると想定される自民党・公明党がどのような政策を打ち出すか、注目して見守ってまいりましょう。