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東京大学の新指針ーUTokyo Compass

東京大学が今年4月に就任した藤井輝夫学長の下で、目指す理念や行動計画をまとめた「UTokyo Compass」を9月30日に公表しました。

私どもが抱いている大学のイメージは、世俗の実情からかけ離れたような学問の世界に閉じこもる「象牙の塔」ですが、東大の新指針は、社会との対話や構成員の多様性を重視し、「公共を担う経営体」として成長する構想を打ち出しており、大変注目されます。

 

目次

 

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東京大学

UTokyo Compass

目まぐるしく変化する今日において、東大がどうあるべきか、現代の世界が直面している地球規模の複雑な課題に対していかに取り組み、社会に貢献していくかについて、詳しく述べられています。

UTokyo Compass「多様性の海へ:対話が創造する未来(Into a Sea of Diversity:Creating the Future through Dialogue)」は、東京大学が目指すべき理念や方向性をめぐる基本方針です。---------東京大学が進むべき方位を共有し、構成員の全体や社会のさまざまなステークホルダーの理解を得ながら、この先数十年をみすえ、その歩みを確実に進めていくための、自分たち自身に向けた共同の問いかけです。

いまあらためて検討すべきは、新たな時代における、大学という法人の自律性・創造性の在り方です。それは既存の手本(モデル)としてどこかに在るものではなく、いままさに向かい合う困難を克服しようとするなかでの課題であり、立ちあげるべき理想です。

いま東京大学は、「知をきわめる」「人をはぐくむ」「場をつくる」という多元的な3つの視点(Perspective)から、目標を定め行動の計画を立て、それらに好循環を生みだすことを通じて、世界の公共性に奉仕する総合大学として、優れた多様な人材の輩出と、人類が直面するさまざまな地球規模の課題解決に取り組もうとしています.


まさにこのように学問の裾野を広げていくために必要な方策を、大学という法人全体が自ら設計し、実現していくことこそが経営です。このUTokyo Compass が提示するのは、現代的で地球的な諸課題を前に大学の可能性を問いなおし、これまでの在り方を設計しなおすことをも厭わない、東京大学という組織ならではの創造的な挑戦の航路であり、また大学を取り巻く社会への問いかけでもあります。

この Compass の作成にあたっても、可能なかぎり対話を取り入れました。基本となる研究・教育・社会協創はもちろん、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)、多様性と国際性、広報・コミュニケーションや働き方、経営戦略等の主題領域において、教員だけでなく職員も加わったワーキンググループを組織し、総長ビジョンのタスクフォースと密接に連携して検討を進めました。

また広報関連の組織の協力のもと、教職員・学生のみなさんとの「総長対話」の機会を日本語・英語で 18 回にわたって設けたのも、経営協議会等を通じて学外の意見をお聞きしたのも、引き続き重視していく対話の実践の第一歩だと考えています。

ここで共有する UTokyo Compass も、すでに決めたのだから変えずに守るという運用ではなく、大学としてのより良い在り方を目指す各部局、各構成員の努力に開かれたものとして、活用し改善し充実させてゆきたいと思います。

現代の世界が直面している地球規模の複雑な課題への取り組みに際し、研究・教育や社会協創において東京大学が創成していく、対話と信頼の相互連環こそが、新たな未来をひらくと信じています。あるべき理想をともに問うなかで、新たなつながりが生まれます。

東京大学が追求してきた「志ある卓越」や「産学協創」の理念の基本も、まさにそこにあると考えています。大学ならではの自律性の創造は、さまざまな課題が目の前に渦巻く、いわば荒海への船出であり、であればこそUTokyo Compass という指針のもとで、みなさんとの対話を進めてゆきたいと願っています。

引用元:UTokyo Compass|東京大学

 

東京大学長 藤井輝夫氏のインタビュー

藤井学長が日本経済新聞とのインタービューにて新指針の狙いや今後の課題を説明しています。

3つの方針

基本理念として「対話から創造へ」「多様性と包摂性」「世界の誰もが来たくなる大学」の3つを掲げました。

対話を創造につなげるにも、学術の高みを目指すにも、多様な人々が集まり意見を交わす環境が必要だ。多様性と包摂性が大事になる。大学を世界の誰もが来たくなる場にしたい。3つの方針はそういう意味だ。

「公共を担う経営体」としての大学のあり方

東大の活動には、国から負託を受けて行っている教育研究とは別に、社会との対話の中で広げてきた活動がある。産学協創、スタートアップの支援などだ。これらは大学の自発的な意思で、やるべきであることを社会に理解してもらい、支援をいただき、社会に返していく。そういう循環をつくり、大きくしていくことが重要だ。

大学が自律的に活動を広げていくための財源

色々なところでお願いしているのは大学の自律的な活動を可能にするものであることが重要だということだ。

人材、特にトップ人材をどう育てるか

一つはグローバルシチズンシップを盛り込んでいる。それぞれの専門性を持ちながら、地球全体の課題に向き合う人を育てる。もう一つは学びと社会を結び直す。学生に現場の経験を積ませるような仕組みをつくる。

文理の融合

文理を問わず学術全体を俯瞰して、どうあるべきかを具体的に問い直す作業をしていきたい。学術長期構想として文理融合を含めてしっかり議論していく。会議体を作ることになると思う。

Compassに部局はどうコミットしていくか。

地球規模の課題は各部局の単独の専門性では解決できない。技術的側面、社会制度的側面を合わせた総合的アプローチが必要で、各部局にしっかり参加してもらう形で進めていく。

この構想は大学の中、外どちらに向けたものか?

大学の中の活動もしっかりやるが、外の方とも一緒にやっていきたい。学外の皆さんとやりとりをしていくには組織体としての能力も高めないといけない。その意味で経営力の強化は外に向けても意味がある。

これは東大の創造的な挑戦の航路であると同時に、大学を取り巻く社会への問いかけでもあると理解してほしい。

引用元: 日本経済新聞電子版10月5日付け

 

UTokyo Compass が掲げた目標

UTokyo Compass が掲げた目標 出典元:日本経済新聞

東大発スタートアップ

 

10月14日、東京大学の本郷キャンパスで、アントレプレナーシップ講座が新たに始まりました。

東大はいま起業の中心地のひとつとなっています。提供する教育プログラムに呼応するように、ベンチャー投資や起業支援の担い手が集っています。今後10年で600億円の投資ファンドを設ける構想も公表しました。

東大関連のスタートアップは430社にのぼります。目立つのは人工知能(AI)の領域です。

新講座の代表である坂田一郎教授(工学)によれば、「エネルギーや環境、素材、化学などディープテックの起業が少ない。海外市場をめざすユニコーンも少ない」

注:科学的な知見を用いて社会課題の解決をねらうのがディープテックです。先端材料やAI、量子コンピューターといった技術を駆使します。成果を出すには時間もお金もかかり、敬遠されやすい。

この講座は、ディープ系の大型スタートアップを何とか創出することを目指しています。起業家による授業に加え、企業の社員とのフィールドワークもあります。上場などを見据えファイナンスも教えます。


ディープテックへの投資は2025年に2000億ドル(約23兆円)以上との予測もあります。


ディープテックはGAFAを主役にしたデジタル変革の次の潮流と期待されています。

東大がアントレプレナー育成に踏み込む意義は、非常に大きいと考えます。東大の動きが、日本中の起業家予備軍を刺激する効果は間違いなくあり、日本再興のためにも頑張ってもらいたいものです。