生涯元気印のお役立ち情報

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10万円のバラマキに経費1200億円

政府は11月26日の臨時閣議で2021年度補正予算案を決めました。経済対策の事業費などで一般会計の追加歳出は35兆9895億円と補正予算として過去最大となります。21年度の一般会計の歳出総額は当初予算から3割増の142兆円に達します。新型コロナウイルス対応で3度の補正予算を組み、過去最大の175兆円となった20年度に次ぐ巨額歳出となります。

デジタル化や先端技術などの成長投資は、8兆2532億円の計上に止まりました。首相が掲げる「新しい資本主義」の促進に向けて、もっと意欲ある金額を盛り込んでほしかったと思います。

成長につながるかどうか不透明な事業や補正で緊急に手当てする必要性がない公共事業なども盛り込まれています。予算の使い道に関する監視が絶対に必要です。


目次

18歳以下の子どもへの10万円相当の給付

18歳以下の子どもへの10万円相当の給付が決定しました。年内をめどに現金5万円を、そして来年春までに使途を限定した5万円相当のクーポンをそれぞれ支給します。

特にクーポンの支給に1,200億円もの事務費用がかかることを財務省が公表したことから、この組み合わせに非常に強い批判が出はじめています。

生涯元気印のお役立ち情報11月16日付ブログ「岸田内閣の経済政策に疑問」にて書きましたように、昨年2020年春に実施した国民全員への一律10万円給付は、内閣府「国民経済計算」によれば、そっくり貯蓄に回ってしまい、「賢い支出」となりませんでした。

家計全体でみれば金余り状態が続く状況で、さらに給付金を支給しても消費拡大にはつながらないという統計結果を十分考慮するべきです。

何らかの給付金を具体化する場合には、その目的と効果を厳しく吟味する必要があるにもかかわらず、約束した選挙公約の実施を優先したことは、非常に残念に思います。

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現金給付の対象者

0歳から高校3年生までとし、高校に進学していない若者も含めます。

予算額は1兆9473億円を見込んでいます。

年内をめどに現金5万円を、来年春までに使途を限定した5万円相当のクーポンをそれぞれ支給します。

中学生以下への5万円給付は児童手当の仕組みを使うため、申請不要です。

高校生世代は自己申請方式となるため、中学生より手元に届くのが遅れます。

中学生以下、高校生世代とも残りの5万円分は、来春の新学期に向けてクーポンで給付するとのことです。

年収960万円を超える世帯は18歳以下の給付金の対象から外れます。

高校生以上については申請しなければ給付金はもらえませんし、クーポンの額面は5万円ですが、その使途が限定された場合、結局は配布しても使われない可能性は相当に高そうです。引用元:助成金ブログ

困窮大学生は対象外?

そもそも今回のバラマキが、困窮者対策であるとすれば、対象に大学生が入っていないことは問題です。
何故大学生は対象外となったのか?……という声が大きくなれば、こちらも問題化して、益々批判の声が大きく挙がりそうです。

持続化給付金の支給遅れ

経産省が新型コロナ対策で行った持続化給付金の支給受付事業では、大手代理店や人材派遣業などの業者が、業務委託を引き受けていました。

その結果、デジタル化の遅れと共に支給が大幅に遅れた原因にもなりました。

何故、日本はここまで効率が悪く、経費と時間がかかってしまうのかは、解決すべき大きな課題です。

今回の補正でまかなう経済対策は、成長と分配の両立に向けた産業構造や社会構造の変革が「喫緊の課題」とうたいながら、中身はそのようになっていない状況です。

22.1兆円の国債発行計画・国債残高1000兆円突破

政府は経済対策の裏付けとして、26日に21年度補正予算案を閣議で決めました。

財源としては、歳出額36兆円の6割にあたる22兆円超を国債発行でまかないます。

岸田文雄首相は日本経済新聞などのインタビューで経済対策の財源について「赤字国債はじめあらゆるものを動員する」と話していた。ただ国債を償還する際に必要な財源については明確な説明をしていない。

財政悪化は歯止めがかからない状況だ。普通国債の発行残高は2010年度時点で636兆円だったが10年あまりで1.5倍以上に膨らむことになる。アベノミクスが本格化した13年度以降は残高の増加ペースが10兆~40兆円と縮小傾向にあったが、新型コロナウイルス禍で大規模な財政支出に踏み切った20年度は約60兆円増えた。

専門家の間では新型コロナ禍に伴う財政支出に関して平常時の予算を切り分けて財源を確保すべきだとの主張が根強い。東日本大震災の際は所得税を25年にわたって2.1%上乗せしたり、10年間住民税を1人1000円ずつ増やしたりと、長期にわたって広く薄く国民に負担を求める形で復興予算の財源を確保した。

引用元:日本経済新聞電子版

55兆円の経済対策で日本は変われるのか?

未来を切り開くのか、過去に戻るのか。どちらを向いているのか分からない経済対策だ。

岸田文雄首相が「数十兆円規模」といっていた対策は、ふたを開ければ財政支出だけで55兆円に膨らんだ。「過去最大」という見かけにこだわり、使い道をよく考えないまま額を積み上げたとしか思えない。

かつて何度も見てきた光景のような気がする。バブル崩壊後、歴代政権は繰り返し巨額の経済対策を打ち出してきた。どれもうまくいったとは言えない。日本が歩んだのは「失われた20年」という停滞の時代だ。

デフレ下では、借金を重ねてでも財政を通じて需要を底上げする必要がある。問題は使い道だ。過去の経済対策は無駄な公共事業や一時的な消費喚起策に偏っていた。将来の成長につながる「賢い支出」に知恵を絞ってきたとは言いがたい。

今回も同じ轍(てつ)を踏んでしまったのか。対策の柱として目立つのは、家計や企業への給付金ばかりだ。一部が消費に回ったとしても、一時的な需要をつくり出すにすぎず、持続的な成長にはつながらない。

本来やるべきは、生産性を高めるデジタル化や世界が競う脱炭素の後押しだ。人への投資や規制緩和を通じ、成長分野に人材が移動しやすくする改革も急がなければならない。今回の対策で、そうした分野に十分なお金が回るとは思えない。

世界はすでに新型コロナウイルス後を見据えた成長競争に入っている。米中対立が収まる気配を見せないなか、日本はそのはざまで独自の強みを持たなければ生き残っていけない。

日本はやはり変わらないのか。成長せずに借金だけが膨らむ。先祖返りしたかのような規模ありきの対策は、次の世代にそんな日本を引き継ぎかねない。

(経済部長 高橋哲史)

引用元:日本経済新聞電子版

 

まとめ

・岸田政権が決定した経済対策及び21年度補正予算は、財政支出が55兆円と過去最大に膨らみました。

・バブル崩壊後、歴代政権は繰り返し巨額の経済対策を打ち出してきました。しかし、どれもうまくいったとは言えません。日本が歩んだのは「失われた20年」という停滞の時代でした。

・過去の経済対策は無駄な公共事業や一時的な消費喚起策に偏っていました。将来の成長につながる「賢い支出」に知恵を絞ってきたとは言いがたい。

・本来やるべきは、生産性を高めるデジタル化や世界が競う脱炭素の後押しです。人への投資や規制緩和を通じ、成長分野に人材が移動しやすくする改革も急がなければならない。今回の対策で、そうした分野に十分なお金が回るとは思えません。

世界はすでに新型コロナウイルス後を見据えた成長競争に入っています。米中対立が収まる気配を見せないなか、日本はそのはざまで独自の強みを持たなければ生き残っていけません。

・規模ありきで成長に寄与しない予算づくりを見直さなければ、経済が停滞したまま債務だけが膨らむ最悪の事態、即ち日本の破綻に陥ることになるでしょう。私としては警告を発しておきたいと考えます。