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アベノミクスの残した宿題

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出典元:Wikipedia


 

目次

 

菅義偉政権の骨太の方針

菅義偉政権は6月18日に初めての「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)と成長戦略を閣議決定します。

既に発表された骨太の方針原案によれば、新型コロナウィルス感染拡大のような緊急時での権限のあいまいさを解消し、首相官邸の意向を反映しやすい仕組みに変えます。

新型コロナウィルスの対応では、これまでの反省を踏まえて、政治主導で病床の確保などを行えるように指揮系統の見直し策を策定します。

国と地方の役割分担を整理し、保健所への指揮系統を明確にします。

コロナ禍で今も問題となっている医療機関の病床不足は、国や都道府県知事の権限を強化します。

9日の経済財政諮問会議で首相は「長年の課題に答えを出し、力強い成長を実現する」と述べました。
本当にコロナ後の日本経済の成長につながる政策を打ち出せるのかどうか、注視していきたいと思います。
 

安倍政権の成果と未解決の課題

安倍晋三首相は、2012年末から8年近くの長期政権にて、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災で大きく傷んだ日本経済の復活に成果をあげました。

しかしながら、潜在成長率の底上げはできず、我が国は先送りされた未解決の課題を残しています。

安倍首相は大胆な金融緩和、機動的な財政出動、そして成長戦略の3本の矢からなるアベノミクスを実施しました。

12年末に始まった景気の拡大は、71か月の戦後2番目に長い記録を達成しました。しかし、13~19年の年平均成長率は実質1.0%に過ぎず、目標の2.0%を達成できませんでした。

15年秋には「新3本の矢」、
  • 強い経済=20年に名目GDP600兆円、
  • 子育て支援=希望出生率1.8、
  • 社会保障=介護離職ゼロ を発表し、
    ニッポン総活躍プラン」が取りまとめられました。
「1億総活躍社会」は、人口減少もあり、労働力不足を解消すべく、女性・高齢者の労働参加を促しました。24~44歳の女性就業率は目標73%を17年に達成し、19年には78%となりました。
高齢者は65歳までの雇用を義務化する高年齢者雇用安定法が13年4月に施行されました。

その結果、労働力率(労働力人口/15歳以上人口)は19年に62.1%に上昇しました。だが、低成長下で、企業は設備投資や正規雇用採用に慎重でした。

就業者は増加しましたが、非正規雇用が7割強を占めました。失業率は2.2%まで低下しましたが、実質賃金は上昇しませんでした。
 
アベノミクスの雇用関連施策は雇用の量的拡大はありましたが、質的向上は道半ばでした。
 

成長への方策

コロナ禍を機にテレワークの活用、ジョブ型正社員普及など柔軟で多様な働き方への取り組みが始まっています。

付加価値の高い成長が期待されるデジタル分野の能力開発への支援及び労働力のシフトによって、賃金上昇を図る政策が強く求められます。

賃金上昇が実現すれば、持続的な好循環、成長率の上昇につながっていくと考えます。

社会保障改革の実態

株価や企業収益は順調に回復し、失業率も大幅に低下しました。しかし賃金は伸びず、雇用増も非正規が中心でした。従って、消費者に成果は及びませんでした。

19年9月に「全世代型社会保障検討会議」が発足し、社会保障改革はやっとスタートを切りました。
19年12月の中間報告で改革の2本柱が発表されました。
  •  第1は、「人生100年時代」を視野に入れて、高齢者の就労促進などで社会保障の「支え手を増やす」。 
  •  第2は、経済力があれば年齢を問わず相応の負担をしてもらう「応能負担」の実施です。
支え手を増やす方策としては、定年など雇用制度の見直しや年金制度改革により70歳までの就業機会の拡大が目指されました。

応能負担に関しては、現行では原則1割、現役並み所得のある人は3割となっている高齢者医療費の窓口負担に、2割負担区分を設ける方針が出されました。

高齢者医療費の窓口負担については、政府内で調整がつかず、昨年12月全世代型社会保障検討会議は2割負担の対象を所得上位30%とすることで決着し、その最終報告書「全世代型社会保障改革の方針」を取りまとめました。

そして今年6月やっと窓口負担を2割に引き上げる法律が成立しました。
その内容は、「単身では年金を含む年収200万円以上、夫婦世帯では合計年収320万円以上の約370万人を対象に、窓口負担を1割から2割へ引き上げる。実施時期は2022年度後半で、法律成立後に政令で定める」となっています

しかし、その法令による影響額は、対象者約370万人に年間800円の負担増を求め、これによる現役世代の負担は、毎月30円軽減されるというにすぎません。

これだけの成果(?)を出すために有識者や国会議員たちは、多大な時間と労力を費やしたという事実を知れば、私ども国民は納得できるでしょうか?
正に「大山鳴動して鼠一匹」の様相です。誠に日本の政治は何をやっているのと大いに憤りを感じます。

就業率はアベノミクスが始まる1年前の12年を底にして上昇しています。しかも上昇を引っ張る主役は65歳以上の高齢者です。

言うまでもなく、高齢者の就業は、低賃金の非正規雇用が中心です。賃金を得ると年金が削減されてしまう「在職老齢年金」のあり方や高齢者が潜在能力を十分発揮できるような実効ある改革が求められます。

このように20年に予定されていた安倍政権の社会保障改革は未完のまま幕を下ろしてしまいました。
菅政権には、以上述べた社会保障改革で積み残された課題に対して鋭意取り組むよう要望いたします。

成長戦略 

安倍政権は第3の矢(成長戦略)により経済の好循環を目指しましたが、成長率が鈍化すると10%への消費税率引き上げを2度も延期しました。
 

短期的視点で経済対策が毎年のように策定され、それを裏付ける補正予算が編成されました。


社会保障改革や財政健全化など痛みを伴う中長期的課題は先送りされました。結果として、基礎的財政収支の黒字化目標は20年度から25年度へ先送りされました。

第1の矢(金融緩和)と第2の矢(財政出動)に依存した結果、国と地方の長期債務残高は、国内総生産(GDP)の2倍にあたる1100兆円を超えるまでに膨らみました。

日銀が大量に国債を購入し、政府の財政赤字を穴埋めするような状態が続いてきています。
安倍政権が消費税率を2度にわたり引き上げたのは、確かに財政再建の一歩です。

しかし、旧民主党政権と自民・公明両党が社会保障・税の一体改革で消費税増税のレールを敷いたにもかかわらず、将来を見据えた改革案を示しませんでした。

日本経済はコロナ禍の20年4~6月期に、戦後最大のマイナス成長に落ち込みました。

日銀が21年7月1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業で今年3月の前回調査から9ポイント改善し、プラス14でした。改善は4四半期連続で、18年12月以来の高水準。
 一方、大企業・非製造業は2ポイント改善のプラス1でした。プラス圏に浮上するのは20年3月調査以来5四半期ぶり。苦境が続いた宿泊・飲食業などのサービス業は人の動きがやや戻り改善しました。
しかし、依然として日本の景気回復は米国、欧州、中国に比べ遅れています。

アベノミクスがやり残した第3の矢(成長戦略)の宿題を引き継ぐ菅政権には、最優先課題のコロナ危機への対応と共に、この宿題にしっかり取り組んでいただきたいと考えます。